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イベントレポート

劇場版「Fate/stay night [Heaven's Feel]」I. presage flower 特別興行
間桐家舞台挨拶レポート

日時:11月25日(土)
会場:新宿バルト9
出演:下屋則子、神谷浩史、浅川悠

 『Fate/stay night』最大の謎のひとつ――間桐家。魔術師の一族であり、冬木市で密かに開催されている「聖杯戦争」に深く関わってきたと言われる、彼らとは何者なのでしょうか。
 『劇場版「Fate/stay night [Heaven's Feel]」I.presage flower』の公開が始まって7週目となる11月25日。新宿バルト9で、間桐家に関わるキャラクターを演じるキャスト陣が結集した「特別興行 間桐家舞台挨拶」が行われました。この模様は、全国120館の劇場でライブビューイングとして配信。キャスト陣が間桐家に込めた想いを初めて語る、とても貴重なイベントとなりました。

  司会の高橋祐馬プロデューサー(アニプレックス)のご挨拶ののち、間桐桜役の下屋則子さん、間桐慎二役の神谷浩史さん、ライダー役の浅川悠さんが登壇。これまでのイベントでは見られなかった顔ぶれに、会場中が大きな拍手で迎えました。
「こうやって間桐家がそろって登壇できる日が来るとは思ってもいませんでした」(下屋)
 下屋さんはいつも桜の白いワンピース姿で出演されていましたが、今回は妖艶な紫色のドレスに身を包んでいます。これまで数多くの舞台挨拶に参加してきた下屋さんも今回はやや緊張気味。まずは神谷さんと浅川さんに、今回の[HF]をご覧になった感想を語っていただきました。
「長いなと(笑)。と言うのも、近年のアニメ映画は60分〜90分が主流な気がするのですが、今作は上映が終わって2時間が経っていて驚きました。ただあっという間でしたね。あと、劇場作品だなとあらためて感じましたね。ファーストカットから、劇場作品だと感じるような絵づくりになっていて。それが感慨深かったですね」(神谷)
「音楽とか、絵の美しさとか演出がすごく美しくて。何よりも最初のほうに登場する衛宮家の玄関にある和ダンスがとても綺麗で。素晴らしいなと思いましたね」(浅川)
 まさかの和ダンスへの言及に一同驚き。会場は大きく沸きました。

 ここでみなさんに、初めて『Fate/stay night』に出会ったころの思い出を語っていただきました。
「『Fate/stay night』の世界観って難しいじゃないですか。(神谷と浅川に)最初に分厚い資料をいただいたのを覚えていますか? 本当についていくのに必死で、最初のアニメ版の収録をしていました。2017年に[HF]を収録することになるとは、当時は思ってもいなかったのでうれしいです」(下屋)
「僕は(衛宮)士郎の役でオーディションを受けさせていただいていたのですが残念ながら受からず、別役の(間桐)慎二役をやらせていただくことになったんです。最初のアニメのアフレコ時に、音響監督・辻谷耕史さんから『この作品の世界は歪んでいるから、士郎のほうがおかしくて、慎二の考え方のほうがマッチしていると思ってください。だから神谷くんの素のままで良いですよ』と言われたんです。その割に『もっと嫌なやつで、いつもの神谷くんみたいに』みたいなことを言われて、一体僕の何を知っているんだ?と(笑)。それが未だに頭の中に残っていますね。一般的には慎二よりも士郎のほうがズレている。だから、慎二は単に嫌なヤツに見えるかもしれないけれど、この世界では慎二の考え方の方が正しいと言うことを念頭にキャラクターづくりをした記憶があります」(神谷) 「最初にライダーの絵を観たときにひと目ぼれしたんですね。顔は隠れているけれど、黒とパープルの色づかいが良くて。『やった』と喜んでいたら、設定資料に『弱い』と書かれていて。ちょっとしょんぼりした思い出があります。マスターに対しては10年以上も慎二といっしょにいると、だんだん慎二のために勝たせてあげたいなと思うようになってきましたね。でも、この感覚は身内(間桐家)にしかわからないかな。歪んだ愛かもしれません(笑)」(浅川) 「いいですね、身内にしかわからない感情って」(下屋)
「生まれ変わっても慎二のサーヴァントになりたいです(笑)! 今回もがんばっていたんですけど……予想通り一撃で倒されてしまいました」(浅川)
 浅川さんの想いを語っていただいたところで、今度は神谷さんに今回の[HF]の収録について伺うと――。
「10年以上『Fate/stay night』に関わらせていただいていますが、慎二は物語の核心に関わることなく、途中で離脱してしまうキャラクターという印象です。今回の[HF]の内容は、そういえば10年くらい前にゲーム版で収録したな……と。まずはそこからでしたね。声優として悪い人を演じるのは楽しいんです。でも、嫌な奴だけど憎めないキャラクターにするのはとても難しい。慎二はどうしても物語において軽く見られがちですが、スピンオフが増えれば増えるほど、バカにしていい、下に見ていい、ネタキャラみたいに扱われるようになって。それがちょっと残念だなと思っていたんです。でも、今回の[HF]の台本をいただいて、映像を観ながらセリフをチェックしたときに……あれ? この慎二はこれまでとちょっと違うぞ、と。セリフや表情を見ると、士郎に対して、彼なりのアプローチをしたいんだという想いが伝わってきたんです。ここに来て新しい解釈を与えてもらえたかもと思って、すごくうれしかったですね。でも、収録現場に行かないとわからないから、監督(須藤友徳)に確認しようと思って。収録前にずいぶん自分の想いを語った記憶があります。そうしたらおおむね自分の解釈どおりだったので。この音をつくるのには、こういう気持ちをもっていこうと、すべてのセリフを意図して構築できたのですごく楽しかったです。あまりにも楽しくなってしまって、ライダーが戦うときに、慎二が笑っているシーンがあるじゃないですか。あのシーンはライダーが倒されるまで、アドリブでずっと笑っている演技をつけていたんです。残念ながら本編ではそのアドリブはカットされていますけど(笑)」(神谷)

 さて[HF]は、ほかの『Fate/stay night』のルートとは違う要素がある。それが間桐家の闇を介して、聖杯戦争の真実が描かれるということ。下屋さんはそんな[HF]の魅力を語ってくれました。
「今回壇上にいる3人の役(間桐桜、間桐慎二、ライダー)はほかのルートにも出ているんですが、お爺さま(間桐臓硯)は[HF]ならではの登場人物なんです。そのお爺さまが登場した時は、ついに来た!!と興奮しました」(下屋)
 また[HF]では慎二と桜たち兄妹と士郎の関係も深く描かれています。神谷さんと下屋さんはその関係についてどのように捉えていたのでしょうか。
「先ほどの話につながるんですが、この世界では士郎のほうが特殊なんです。慎二の行動はピーキー(過剰に神経質)だし、おかしいことを言っているように見えるけれど、慎二は「遊びに行こうぜ」と言っているだけなんだと思います。でも、その誘いを「いや、俺はいいや」と理由をつけて断ってくる。「こいつはどうやったら僕と遊んでくれるんだ?」と思っているうちに、だんだん強い言葉にかわっていったのかなと……。だとしたらその気持ちは理解できる。たとえば、部活の弓道の試合が近いのに、バイトで怪我をした……となれば「なに怪我してんの!どっちが大切なんだ?」と言いたくもなる。もちろん慎二が、上下関係や兄と妹という関係、自分のほうが偉いんだという気持ちが強すぎるのは問題だと思いますし、それに従順すぎる妹(桜)も多少問題があると思います(笑)。だんだん憤ってしまった結果が、いまの慎二なんだと思います。たぶん、慎二が望む人に構ってもらえないんでしょうね、彼が構ってほしい方法では。そう言った意味では、かわいそうなヤツなんです」(神谷)
「神谷さんの言う通り、慎二って悪い人じゃないと思っているんです。桜目線で見ていると、ひどいことをされても嫌いにはなれないところがあって。たぶん、彼のおかれている環境のせいで歪んでしまったんだと思っています。こうやって隣で神谷さんのお話を聞いていて、やっぱり2人(慎二と桜)は兄妹だなという気持ちが、なんだかふつふつと沸いてきました。神谷さんの慎二への気持ちを聞いて、すごくうれしかったです。なかなかアフレコ現場でもこういうお話はできないので」(下屋)

 2人が語るキャラクターへの深い想いに観客は耳をそばだてます。そしてトークは、浅川さんが身に着けていたアクセサリーに。
「実は今日、ヘビの指輪をつけてきたんです。実は私はライダーにお世話になっていて。私はアニメのコンベンションで海外によく行くんですけど、『Fate』シリーズの人気がすごく高くて。ライダーの人気もあって、おかげで向こうで自分の名前を知ってもらう大きな助けになっているんです。その感謝の気持ちを込めて、ヘビの指輪をだいぶ前に買いました」(浅川)
 浅川さんが今回の[HF]で最も印象に残っているのは、慎二とライダーがともにセイバーと戦うシーン。ところが、そのシーンを挙げたときに、神谷さんが
「慎二が『いっけえ、ライダー』と言ってくれたときにすごくうれしかったですね」(浅川)
「ああ、なるほど!そこにズレがあるんだね。慎二はライダーに期待しているのではなくて、己の強さしか信じていないんです。だからライダーと慎二に溝があるんだね」(神谷)
「そうそう。そこがこのコンビの良いところなんです。私はあまり重い愛情が好きじゃなくて、それぞれが行動することでチームワークに見えるというのが好きなんです」(浅川)

 3人のトークは止まりません。今回は「特別興行 間桐家舞台挨拶」として、トークの時間を長めにとっていましたが、たちまち終了の時間に。最後に3人からメッセージが贈られました。
「これまでなかなか皆さんにお礼を言える機会がなかったので、今回は直接お礼が言えてよかったです。慎二と桜をよろしくね!また会えますように。ありがとうございました」(浅川)
「今回はライブビューイングで120館開けてくださったと聞いて驚いています。全国で舞台挨拶をご覧になっていただいてありがとうございます。おそらくここにいらっしゃるみなさんの方が『Fate』について詳しいと思います。でも、間桐慎二のセリフを音にすることに関しては誰にも負けないはずです。その気持ちを持って第二章、第三章とみんなでアフレコへと臨んでいきたいと思います」(神谷)
「[HF]で初めて間桐家のお話が描かれます。第二章、第三章と、桜だけでなく慎二とライダーも活躍しますので、ぜひ皆さんに間桐家の聖杯戦争を最後まで見届けていただけたら幸せです。今日はありがとうございました」(下屋)
 会場からは温かい拍手がおくられ、「特別興行 間桐家舞台挨拶」は無事に終わりを迎えました。